不安になっちゃうのは、仕方のないこと。
でも、応援したい気持ちだって。
ちゃんと――あるんだよ?
想いの色
携帯をちらりと見て。
彼女は小さく、息を吐く。
高校を卒業してから。
彼が忙しくなって。
それでも、大学の講義のある日は、欠かさず来ているから。
姿を見てもいるし。
同じ時間を過ごすことも、できるから。
淋しさはあまり、抱くことは、ないけれど。
それでも。
こうして、会えない日は。
メールを出しても、すぐに返ってこない、なんていう日は。
繋がっていると、信じていたものが。
実は、繋がっていないんじゃないか、なんて。
疑ってしまいそうになってしまう。
開いて。
問い合わせて。
新着メールがないことに、息を吐く。
メールを出したのは、いつだっただろう?
思い出すように、考え込んで。
彼女は時計を見上げる。
だけではなくて、送信メールの入っているフォルダを開いて。
出した時間を、確認して。
そうしてからやっと、部屋が暗くなりはじめていることに、彼女は気づいた。
立ち上がって、壁にある、照明のスイッチへと、手を伸ばす。
言葉にして届けたのは、確か。
とても、些細なもので。
だから、返事がなくても、仕方がないと。
そう…思っているのに。
今までずっと、どんなに些細なことにでも、返事をしてくれたから。
言葉を、返してくれたから。
だからこんなに、不安になっているのかも、しれなくて。
指先で触れて。
カチッと音を立てて、倒せば。
部屋は、明るくなって。
途端に。
「姉ちゃん、ちょっと買い物行ってきて!」
なんていう言葉と共に、開けられた扉に、瞳を向ければ。
そこには、弟の姿があって。
「…今、何時だと思ってるの?」
「九時ちょっと前」
「………」
「すぐそこのコンビニでいいからさ。頼むよ、姉ちゃん!」
少しだけ、身体を折って。
顔の前で、手を合わせたその姿に、小さく息を吐く。
オレ今、宿題やっててさ。
出られないんだよ。
とか、加えられる言葉に、もう一つ、息を吐いて。
彼女は部屋の中へと、戻る。
薄い上着を羽織って。
財布を手にして。
念のため、携帯もポケットへと押し込んで。
それから、何を買ってくるのかと問えば。
弟の表情は、笑顔になって。
「さっすが姉ちゃん!」
「それで?」
「ポテトチップス、頼むな!」
渡された小銭と、満面の笑み。
その二つに、微苦笑を零しながら、息を吐いて。
彼女は自分の部屋へと戻っていく背中を、少しの間、眺めてから。
付けたばかりの照明を、落とした。
ただ待っているだけだから、不安になるのかもしれない。
何かをしながらだったら。
まだ、もしかしたら。
楽だと思えるかも、しれなくて。
踏み出して、廊下から、階段へ。
二階から、一階へ。
そして。
「どこ行くの?」
「尽が、お菓子買ってきてって」
「そう。じゃあ、珪。付いていってあげてくれる?」
「…わかった」
……え?
リビングへの入り口で、立ち尽くしていれば。
見慣れた姿が、視界の中に、現れて。
「優菜?」
「…いた…の?」
混乱して、それしか言えなくて。
「……ああ」
「何で、教えてくれなかったの?」
「私が独り占めしたかったのよ」
含み笑いで届けられたのは、母の声と、言葉。
それに頬を膨らませれば、彼から謝罪の言葉が降って。
「ううん。珪くんは悪くないから」
「…でも……」
「いいから、行こう?」
ね?
促して、足を踏み出して。
二人で外へと出て。
「…メール、返してくれなかったのも?」
「ああ…おばさん」
「………」
「そうしたら、尽が…」
「え? じゃあ尽、知ってたの? 珪くんがウチにいること」
「? ああ…」
彼の顔を見て、ふっと、息を吐く。
さっきまでは、あきらめのものだったのに。
その色が、濃かったのに。
考えて。
彼女はふふっと、笑みを零していた。
END
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携帯をぼんやりと眺めていて、できた代物。
こういうことも、やはりあるだろうと。
というか、ラストはよくあるパターンじゃおもしろくないので。
有利お母さんと尽に出てもらいました(笑)。
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