いつもより、少し早く――目が覚めた。
わずかに揺れるカーテンに、窓を開けたまま眠ってしまったことを思い出した。



おはよう




いつもと同じ朝食を、同じ手順で用意して。
席に着く前に、壁にかけてある時計を瞳に映せば、いつもよりも、やっぱり――早くて。
彼はふぅ、と、小さく息を吐く。
学校へ行く用意をし終えてから、ゆっくりしようと考えたのはよかったのだけれど。
いざそうしようと思った時に、眠くなってしまったら……と考えると、彼はわずかに眉根を寄せる。
ならば今、早く目が覚めてしまった分を眠っておけばいいとは思うのだけれど。
寝過ごしてしまったら元も子もないし。
何より、眠気はゼロではないにしろ、ほとんど、なくて。
早く行った分、彼女に会えればいいのに…と、何度思ったか、しれなくて。
それでも、彼女に会える時間はわかっているし。
と言うより、彼女が家を出る時間を、前に教えてもらったから、知っているわけで。
「葉月くんって何時ごろ出てくるの?」
最初にそう聞いてきた彼女を思い出して、彼はふっと笑みを浮かべた。
答えた時間までは、まだ結構あって。
その事実に、もう一度息を吐いたあと。
彼は小さく、いただきますと発した。

少し早いけれど、することもやはりなくて。
予想していた通り、襲ってきた眠気を噛み殺しながら。
彼は家を出てしまっていた。
途中の公園で、時間を潰してもいいかもしれない、なんて考えながら、彼は歩いていたのだけれど。
見上げた青空は、心なしか少し、曇っていて。
昇っていた太陽の光も少し、弱く見えて。
このまま外にいるよりは、なんて気持ちが、頭をもたげ始めてきて。
気がつけば、公園を素通りしてしまっていた。
振り返って、入り口を視界に収めて。
大きく大きく、息を吐く。
ほかに、こんなに朝早くから寄れるような場所なんかなくて。
思い付かなくて。
彼はただ、最終目的地へと、歩いていくしかなくて。
肩から提げたバッグを後ろへと移動させて、彼はポケットへと手を突っ込む。
今から学校へと行っても仕方ない、という思いばかりが広がって。
つまらない、という言葉を口走りそうになったのだけれど。
それで、自分が何のために学校という場所へと行こうとしているのかを知って。
彼は苦笑を零した。
のに。
「葉月くん!」
駆けてくる足音と。
今聞きたかった声に。
彼は一瞬驚いたあとで、振り返る。
と、同時に隣に辿り着いた色に、彼は足を止めた。
瞳をそちらへと動かせば、嬉しそうな笑顔とかち合って。
「どうして……?」
聞けば彼女は、その嬉しそうな表情のまま、口を開く。
「早く目が覚めちゃって。尽にも、びっくりされちゃった」
ほんの少しだけ苦いものを宿しながらも、その顔はやはり嬉しそうで。
つられたように、彼も微笑う。
「葉月くんは?
同じ?」
「ああ、同じ」
「へぇー…、何でだろうね?」
ゆっくりと歩き出せば、同じように彼女も歩き出す。
べつに、理由なんてどうでもいい。
彼女と過ごす時間が、今日は少し、長くなったから。
それだけわかれば、それでよかったから。
「葉月くんが遅刻すれすれじゃないの、珍しいよね?」
「おまえだって、似たようなものだろ?」
「違うよ?
この頃は少し早目に出てるんだから。今日はそれよりもかなり早いけどね」
人がまばらな道を、そんなことを話しながら歩いていく。
早い時間に起きてくれた自分に、今日ばかりは感謝して。
見上げた空には、いつしか。
白はいつしか、減っているように見えた。

END

 

朝って書いてないなー、と思いまして。
でも何を書こうかとあまり決めずに書き出してみたら、またもやこんなことに…。

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