あまり見ないと言われて。
確かにその通りだと思った。






ポストカードを一枚、手に取って。
彼女は笑んでいたけれど。
そこに映っていたものには、苦笑してた。
「昔は、よくあったのかなぁ?」
そう言って。
それは棚に、戻されて。
「やってみたいなーって、小さい頃は、思ったけど」
「けど?」
「言葉が通じないって、知ったあとは。何か…やめちゃった」
「……ああ」
「その国の言葉で書けば――なんていうのも、考えるんだけど。どこに着くかなんて、わからないでしょう? だからなおさら、できないなーって」
「………」
「それに、伝えたいことも、特になかったりするし」
「………」
「珪くんは? やったことある?」
聞かれて。
俺は少し考えてから。
頭を横へと振った。
伝えたいことは、あった。
届けばいいと、願った。
けれどそれは、ただ一人で。
その人の手に渡らなければ、意味はなくて。
だから。
行動には移せなかった。
「海が近くにあったら、毎日見に行ったりしたかなぁ?」
「どうだろうな?」
「うーん……」
「今は?」
「え?」
「今、やれって言われたら」
悩んでいた彼女に、問いを投げれば。
彼女は俺の顔を見てから。
首を傾げて、考え込んでくれた。
世界の共通語になりつつある言葉を、とりあえずは、勉強しているし。
彼女なりに、伝えたい言葉も、あるかもしれない。
「手紙は…入れない、かな」
けれど、彼女から出された答えは。
そんなもので。
「入れない…のか?」
「うん」
「何入れるんだ?」
「…珪くんが造ったアクセサリー」
「………」
「たくさんの人に、見てもらいたい…から」
呟くように言って、彼女は踵を返す。
それを、一歩遅れて、追いかけて。
「しないけどね? やりたいけど」
落とされた小さな言葉を、きちんと拾った。
横に並んで、顔を見ようとするけれど。
彼女の視線は、俺を避けるかのように、動き回っていて。
それでも、ほんのりと赤いことは確認できたから。
「やってくれてもいいけど。べつに」
そう、口を開く。
と、彼女は俺を見て、大きく目を見開いて。
「珪くん…?」
「けど、俺が創ったものだって、わかるようにしてくれないと、困るけどな」
「………」
「優菜?」
「…やらない」
「? どうして?」
「だって…もったいないもん」
顔を俯かせて、そう言って。
それに、「そうか?」なんて声を発すれば。
「うん。それに…あんまり早く、歩いていって、ほしくないし」
「………」
「今だって…」
そこまで言って。
彼女は慌てて、口を覆った。
俺の顔を見て。
「何でもないから」
そう言って、ふるふると首を振って。
彼女の歩みは、速度を上げる。
その背中を追いながら。
俺は小さく、笑みを浮かべていた。

END

 

最後の方で、高校時代だということをすっかり忘れておりました。
まだくっついてない! と、慌ててました。
主人公ちゃんと同じく、樹も(汗)。

とにかく、『二次創作書きさんにたった10のお題』より、お借りしました。
七つ目は、『ガラス壜の中の手紙』。
ありきたりなものにしたくない…と考えたら、こんなものに。

web拍手に置いてました。

戻る