何がいいかと考えるのは。
いつものこと、だけれど。今年は特に、なのかもしれない。
今回は
撮影の合間に、買い物をしようと。
彼はその輪を、抜け出した。
けれど。
「葉月くん!」
スタッフの一人に、呼び止められて。
振り返れば。
「俺たちも一緒、していいか?」
なんて、右から声がして。
左から首を回していた彼は。
ほぼ、頭の後ろからした声に、驚いていたのだけれど。
「もう少しでホワイトデーでしょ? 近藤くんに強請ろうと思って」
少し下から聞こえた声に、彼は焦点を合わせて。
「何を強請られるんだか」
「えー? 高いものは強請んないって」
途端にはじまった会話に、息を吐く。
それでも、両脇を固められているような、この状態では。
逃げることも、できなくて。
「おまえ、優菜ちゃんに何返すか、決めたのか?」
「…まだ……」
「まぁ、見て決めてもいいよね? 今回は特に、恋人として、初めてもらったものに、返すんだし」
「………」
後頭部を掻いて。
そうしながら、歩を進めていく。
どこ入ろうかー?
なんて声に、もう一度息を吐いて。
それでも、何を渡したらいいのか、まだわからなくて。
「でも、大変だよね?」
「? 何が?」
「ほら、ホワイトデーの前日、誕生日じゃない、優菜ちゃん」
「確かになー」
「一緒にしちゃうっていうのも、ありなんだろうけど。優菜ちゃんなら、きっと。微笑って許してくれるんだろうけど」
「…しない」
「だよね? 一緒にしたくないよね?」
くすくす笑って、届けられた言葉に。
彼は眉根を寄せて。
それでもまだ、考えていて。
確かに、大変だとは思う。
思うけれど。
これはもう、決められたことで。
変えられない、事実でしか、なくて。
けれど、考え込んでしまう原因の一つには、なっているのかも、しれなくて。
「あ、マシュマロー」
並んでいた、白いものに。
反応を示したのは、近くにいた彼女で。
それを見ていた、もう一人のスタッフに。
「買ってください。本命の証」
そんな風に、強請りはじめて。
「はいはい。それでいいのか?」
「うーん…ピンク色のって、イチゴ?」
「多分な」
二人の会話に、彼は小さく、息を吐く。
何度目だか、わからないけれど。
とにかく自分は、邪魔なような気もして。
少しだけ離れて、彼はそこに並んでいるものを、見て。
けれど。
気になったのは。
白いそれ。
本命の証?
話を思い出して、考えて。
よくわからないまま、一つを手にする。
『アメ』の話は、よく聞くけれど。
『マシュマロ』の話は、聞いたことがなくて。
それでも、『本命の証』だと、いうのなら。
彼女に渡したいと思うのも、本当で。
ピンクだとか、黄色だとか、白だとか。
淡い色のそれは、彼女を連想させるものでしか、なくて。
彼はそれを手にしたまま。
またゆっくりと、歩を店内へと、進めはじめた。
END
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