その場面を目撃したのは
本気で 初めてだったされてるんだろうなぁ…なんて言うのは
そりゃまぁ 思ってたけど
けど
そういう話題も
わたし達の間にはなかったし
だから
ちょっとだけ
安心…してたのかもしれない
彼だって
わたしを置いていく
その可能性があること
それを わたしは
忘れてた
告白
「好きなんです」
なんて紡がれた声に、わたしは小さく、息を吐く。
用はあった。
ないと言えば、嘘になる。
彼には言ってなかったけどさ。
教室から急に消えた、彼の姿を捜して。
わたしはこんなところまで、来たんだけど。
けど…。
そこで、わたしは爪先へと、視線を落とした。
そっか。
そうだよな。
彼はわたしのじゃないし。
いつかきっと、彼はわたしを置いて、どこかに行っちゃうんだ。
麻衣みたいに。
彼氏を作っちゃった、わたしの親友みたいに。
寄り掛かっていた壁に、ことんと首を倒して。
秋の青い空を見上げる。
それと同時に。
「悪い」
って、彼が断った声が聞こえた。
そうだとは思ってた。
けど…不安だった。
彼の目の前に立ってる女の子は、わたしが見たことのない子で。
だとしたら、彼もきっと、知らない子で。
後輩らしいその子は、ショックを受けたような顔を上げて、彼を見てた。
「それも…受け取れない」
「どうしてですか? 誕生日を祝うぐらい……」
「知らないやつから、もらえない」
それじゃ。
踵を返して、彼はこっちに近づいてくる。
どうしよう、なんて思ったけど。
背後で駆け出す音がしたから、そこに居続けた。
走り出したのは、女の子。
彼はそれを、少しだけ振り返って、見てから。
また、ゆっくりと歩いてくる。
わたしの方へ。
「振っちゃったんだね」
声を掛ければ、彼はぎくりと、肩を揺らして。
それから、その瞳に、わたしを映してくれた。
わたしはじっと、彼を見る。
「…田端……」
「勿体無い。結構可愛い子だったのに」
「……タイプじゃない」
「ほー。初めて聞いた、そんなこと」
「………」
別に、よかったのに。
そう思ってても、言えなくて。
だって、断ったのは、彼の意志。
わたしのことなんか、関係なかったかもしれないんだし。
「でも…初めて見た」
「?」
「君が告白されてるとこ」
「……ああ」
「もう、高校生活も終わるのにね?」
「…だな」
彼はわたしの隣りに並んで。
同じように、壁に背を預けて。
それをただ、じっと見ていたわたしは。
なぜか、どうしようもなく不安になって。
その場に座り込んだ。
「どうした?」
「…わかんない」
「…?」
「何だろう…? 当たり前のことなのに、気づかなかったからかな?
それに、気づいちゃったから、不安になっちゃったのかな?」
「……?」
「葉月くんだって、ずっとそばにいるわけじゃないのにね?」
「……ああ…」
「葉月くんだって、いつかは。可愛い恋人作って、離れていっちゃうのにね?」
「………」
「わかってなかった。そんなこと」
告白して。
それから、わたしはまた、地面に視線を伏せる。
高校だって、もうすぐ終わるのに。
これがずっと続くんだって。
どこかで、そう思ってた。
麻衣が離れていった時。
わかった、はずだったのに。
それでも麻衣は、そばにいるけど。
いてくれてるけど。
彼は男の子だし。
いつか出来るだろう、彼の恋人に。
不安を感じさせちゃ、いけないから。
彼はきっと、わたしから、離れていっちゃう。
「…ごめんね? 何かちょっと、恥ずかしいこと言ったかも」
「――いや。おまえだし…。いいんじゃないか?」
「…それ、誉めてる? 貶してる?」
「どっちでもない」
言葉に、くすくす笑って。
わたしは立てた膝に、顔を伏せる。
何だろう?
ものすごく不安だ。今。
「田端?」
「ん? 何ー?」
顔を上げられなくて。
そのままの体勢で、言葉を返す。
今日は彼の誕生日なのに。
みんなで、パーティー、画策してたのに。
何か今、すごく不安。
「…夕方、君んチに、迎えに行くから」
「? ああ」
「家にいてね?」
不安。
わけも、わからず。
不意に泣きたくなって、どうしようも、なくて。
わたしはそのまま、彼の顔を見られずにいたけど。
彼は、わたしが顔を上げるまで。
ずっとそばに、いてくれた。
END
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