たくさんの声と。
決まり切っているような色。
それでも彼女は笑っていて。
楽しみだね? なんて、紡ぐから。
俺もつられたように、笑みを零して。
楽しみだな。
そう、届けた。
心の底から
手を伸ばして、もうすでに飾られているそれに、彼女は触れる。
丸い飾りの線をなぞって。
嬉しそうに、笑っていて。
その姿を見つつ、俺も笑みを零した。
彼女は笑みは感染するのだと。
本気で、そんなことを考える時がある。
にっこりと笑った、その笑顔を見て。
その誰かも笑う。
癒されるような笑みに、その誰かも、彼女に興味を持ってしまうんじゃないか、とか。
そんな風に考えると、閉じ込めておいた方がいいのかもしれない、なんて、思ってしまう。
けれど、そんなことをすれば。
彼女の笑みは、見られなくなってしまうかもしれない、とも考えて。
俺は小さく、苦笑を零した。
「次は?」
声を届ければ、彼女は俺を見てくれて。
「その、珪くんの手元にある、サンタクロース」
そう、答えを返してくれた。
これか? なんて、上へと上げると。
彼女は満面の笑みで、頭を縦に振った。
渡すために、近づいて。
差し出された彼女の手に、小さな人形を置く。
赤い服を着た、真っ白なひげを生やした、その人形を。
すると彼女は嬉しそうに笑みを浮かべて。
「ここでいい?」
「ああ」
糸を輪にして、かけて。
そうして、色を載せていく。
毎年見ているその色が、べつの色をまとっているかのように見えて。
彼は目を細める。
「だいたい、いいかなぁ?」
「まだあるけどな。飾り」
「全部付ける?」
「好きにしていい」
言えば、彼女は考え込んで。
それから、ツリーを見上げた。
俺の身長ぐらいの高さは、優にある、それを。
その視線を追うように、俺もツリーを見て。
「いっぱい付けると、にぎやかで楽しい感じになるよね?」
「だな」
「少ないと、淋しい?」
視線を感じて、彼女に焦点を合わせる。
べつに、そんなことはないとは思う。
彼女がここにいてくれさえすれば。
俺は特に、淋しさを感じたりはしないから。
だから。
「ないんじゃないか? そんなこと」
そう、届けた。
彼女はまた、考え込んで。
ツリーを見て。
下から上へと、飾りのバランスを見るように――見て。
俺を、その瞳に映してくれた。
「そうかな?」
「俺は…そう思う、けど」
「………」
今度は振り返って、まだ残っているものを見て。
ゆっくりと踵を返して、それへと近づいていく。
何が残っているのかを確認して。
「これは…付けるけどね?」
なんて言いながら、彼女は大きな星を手にした。
金色の星に、俺は小さく、息を吐く。
シンボルのようなそれがないと、少し淋しいかもしれないからな。
それに……べつのものにしても、おかしいだろうし。
思いながら、また。
彼女のそばに立つために、足を動かした。
かたわらへと着いて、ツリーへと身体を向けて。
机に、寄りかかる。
「椅子に乗って、やった方がいいな。届かないだろ?」
「うん」
わずかに肩を落として、頷いて。
彼女は視線を落とした。
どうしたのかと問えば。
彼女はわずかに、首を振って。
「優菜?」
なおも促すように、名を呼べば。
ちらりと視線が向けられた。
「あの…ね?」
「?」
「ちょっと、不安になっちゃったの」
言葉に、俺は首を傾げる。
不安って…何が?
そんな風に、眉根も寄せて。
「わたしばっかり、飾り、付けてるでしょ?」
「ああ…」
「いいのかなーって」
「いいって、言っただろ?
それとも、やりたくなかったか?」
「ううん? 違うの。ただ……」
「ただ?」
きゅっと拳が握られて。
なぜだか、見ていられなくて……、俺はそれに、手を重ねる。
と、一瞬、彼女の頬が緩んで。
「一緒にするの、嫌なのかなーって、思っちゃっただけなの」
そう、綴った。
それに、小さく目を見開いて。
俺はふっと笑みを浮かべる。
そんなことは、全然ないのに。
「だって、珪くん、好きにしていいとしか、言ってくれないんだもん」
「そうだな」
「…だから……」
「悪い」
左手の薬指を飾っている、そのリングに口付けて。
俺はツリーを、視界に収める。
彼女は顔を赤くしていて。
「一回ぐらい、おまえの好きなようにって思ったんだ。これからきっと、ずっと二人でやりたいから。俺」
「…何を?」
「これの飾り付けも、クリスマスっていう、日も」
「………」
「二人だけじゃ、なくなるかもしれないけどな」
「それって……」
思い当たったのか、彼女は頬を赤くして。
俺は、その反応に笑みを浮かべて。
赤い頬に、唇を押し当てる。
「嫌なら、そう言えよ?」
「……言えないよ。嫌じゃないもん」
その返答に、嬉しくて笑えば。
照れながらではあったけれど、彼女も笑ってくれた。
END
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