誰が何を考えていても
かまわない

自分の気持ちさえ
しっかりと わかっていれば

今はそう
それでいい




確固たるモノ





練習が休憩に入って。
少しでも涼もうと、校舎の中へと入っていく。
廊下を少し、進んで。
そうして、校舎の中を、何となく見ていたのだけれど。
「………」
何となく、いるかな、と考えてしまったら。
足はその方向に向かって、進みはじめてた。
校舎の中は、案外静かで。
日曜日の雰囲気で。
でも、今日は平日で。
不意に覗いた職員室には、先生の姿はなくて。
やっぱり、休みなんだと、実感させられる。
夏休みがはじまった校内で。
きっと、賑わいを見せてるのは、体育館と校庭ぐらいのものだろう。
ただの練習なのに。
応援されても、困るだけ。
きゅっと、足音を立てながら進んで。
その、部屋の前。
扉に手をかければ。
「!」
「……びっくりしたぁ…」
それはこっちの台詞。
思いながら、勢いよく開いた扉を挟んで、二人で笑う。
いてくれてよかった。
そんなことを、思いながら。
「どこかに行くんスか?」
「ん? コピーを取りに行こうかなーとか?」
砕けた話し方。
周りに誰もいないから。
考えながら、肩まで上げられた、一枚の紙を瞳に映す。
何だろう?
首を傾げれば。
「やってみる? 編入試験の」
そう言って、彼女はにこっと笑った。
どこか、いたずらっぽい、そんな笑顔で。
「編入試験?」
「そう」
周りをきょろきょろと見渡して。
彼女は一歩、廊下へと出てくる。
そうして、歩きはじめて。
俺もあとをついて。
「明日なんだって。で、試験問題を作ってみてました」
「鳥川先生が作ったんスか?」
「うん。いけない?」
「いけなくはないっスけど……」
ということは、俺のクラスかもしれない。
ようやく、汗が引きはじめた額を、肩にかけていたタオルでもう一度拭って。
それから、そんなことを考えれば。
「橘たちのクラスには入らないよ?」
そう、言葉。
「違うんスか?」
「うん。何か、話の流れで、鳥川先生、作ってみますか? って言われて。暇なんでいいですよって、受けちゃった」
「………」
「部活、受け持ってないしね。毎日毎日、二学期のこと考えてても、仕方ないし?」
「…確かに、そうっスね」
ほんの少し、後ろを歩きながら、ついていく。
横顔を盗み見れば、同時に零されたのは、ため息で。
「…どうかしたんスか?」
「……うん」
話してくれるのかと思ったのに。
彼女はただ、頷いただけで。
笑顔も、なくて。
そのまま、印刷室に入っていく。
扉を閉めれば、彼女はまた、ため息を吐いて。
俺はどうすればいいのか、わからなくて。
「先生?」
そう、促してみるだけ。
でも。
「若月先生と…何かあったんスか?」
その名前を出せば。
彼女の肩は、びくんと跳ね上がって。
俺は逆に、肩を下ろす。
わかっているのだと、思う。
俺が、誰を想っているかとか。
そんなことは。
だからこそ、その名前を出すのには、かなりの抵抗があったのに。
「先生」
「…ない」
「………」
「何も、ない」
手を伸ばして。
後ろから抱き締める。
彼女の身体が強張った理由なんて、わからなかったけれど。
それでも。
あの人もしたんだ。
それだけは、何となくだけれど、予想が付いた。
「た、橘…?」
「何スか?」
「離して?」
「嫌だって言ったら?」
「…橘」
「嫌だ」
答えて、腕に力を込める。
知ってる、はずなんだ。
この人は。
わかっている、はずなんだ。
この人は。
「橘」
「本気で抵抗しない、柊が悪い」
「っ!」
こめかみに口づけて。
力を込めて、抱き締めて。
「俺、あの人には負けないから」
「………」
告げても、彼女は何も言わなくて。
ただ。
俺の腕に、手を添えただけだった。

END

 

剣ちゃんに傾いているわたしがいる……。
おかしいなぁ。最初は…。
うーん……(考え中)。

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