何気ないことが、大切な思い出になる。
知っているから。
どんな時も、気が抜けないの。

あなたが興味を持ったものに。
わたしも、心を傾けたい。



interest




出された注文のそれを見て。
ボタンを押して。
お金を出されて、それも打ち込んで。
おつりとレシートを渡して。
「ありがとうございました!」
言いながら、頭を下げる。
その一連の行動をし終えて、ほっと息を吐くと。
「優菜」
そう、声をかけられた。
振り返れば、いつのまにやってきたのか。
彼の姿が、そこにはあって。
「珪くん」
「レジ?」
「うん。今日ね?
やってみる? って、言われて」
簡単だから、なんて言われたのが、ここに着いて、早々。
一年上のバイトの先輩に言われて。
簡単なら…という気持ちで、説明を受けて。
確かに、やることは少なくて。
書かれているものを打ち込んで、合計金額を口にする。
それから、出されたお金の金額を打ち込んで。
映し出された金額を、キャッシャーから出して、客に手渡す。
たった、それだけ。
けれど、間違えたら、大変だというプレッシャーに気づいたのは、そのあと。
いざ、客を前にしてやり始めたら。
恥ずかしくて、声が震えそうにさえ、なってしまって。
「簡単?」
「うん…。でもね?
間違っちゃったら、お店に迷惑かかるでしょう? それに気づいたらね? ちょっと……怖いなーって」
じっとボタンを見続ける彼の横顔を見続けて。
それでも彼女は、いつも彼が座るはずのテーブルが開いているかを確認する。
「珪くん、いつものでいいの?」
「ん?
ああ…」
「?」
「いつも見てるけど……簡単そうだよな?
って、思って」
小さく苦笑した彼に、笑みを浮かべて。
彼女はコクンと頷く。
「やってみる?」
何となく聞けば。
彼はボタンへと、手を伸ばして。
「でも、結構小さいんだな?
ボタン」
「あ…、男の子には、そうかもしれないね?」
「けど、おまえがやってるの見たら、覚えられそうだな」
「…そうだとは……思うけど」
今、会計をしに、客が来たら。
きっと彼は、彼女の手元を、じっと、見続けるのかもしれない。
そんな考えに至って。
彼女は無理矢理、彼の向きを
180度、回転させて。
その背を、力任せに押した。
「優菜?」
「すぐに持っていってあげるから。休憩時間、なくなっちゃうでしょ?」
レジから彼を引き剥がして。
どうにか、歩かせて。
上から降ってくる笑みを、ただただ聞いて。
「歩く、ちゃんと」
その言葉に、手を離して。
離れて。
それから、周りから注がれていた視線に、気づく。
くすくすと笑われて。
逃げるようにして、カウンターまで、彼女は踵を返した。

END

 

短い…。

樹の仕事場で、別の仕事をしてる男の子がしてたことから、出来た代物。
それをしっかり、珪くんに置き換えて考えちゃいました(苦笑)。

珪くんって結構、何でも出来そう…。

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