風のない日。
不意に、ガサガサと音を立てた枯れ葉の固まりに。
彼女は振り返った。
息吹
「?」
急に足を止めて。
振り返った彼女は、首を傾げていて。
「どうした?」
その彼女に気づいた彼もまた、足を止めた。
踵を返して。
彼女を置いて、歩いてしまった分を、戻っていく。
「何か…音がしたの」
「?」
「ガサガサって……」
「枯れ葉?」
「だと思う。けど、風もないのに…変じゃない?」
首を傾げていた彼女は、そう言って。
彼へと焦点を合わせる。
と、また、同じ音が響いて。
二人は同時に、そちらへと瞳を向けた。
風もないのに。
その、枯れ葉の固まりだけが、動く。
「…何だろ?」
また、小さく首を傾げた彼女を置いて。
目を細めた、そのあと。
彼は足音を立てずに歩き始めた。
足早に。
でも、音はなく。
「珪くん?」
「しっ」
口元に、立てた人差し指を押し当てれば、彼女は口を押さえる。
それに、小さく笑ってから、身を屈めた。
彼女も倣って、身体を折って。
二人で、枯れ葉へと、視線を注ぐ。
「あっ…!」
目が合ったのは、小さな生き物。
枯れ葉の中で居場所を探して、時折動いて。
ガサガサと音を立てていたそれは、二人に気づいて、動きを止めて。
「にゃー」
挨拶のように、声を上げた。
金網の向こう。
風によって集められた枯れ葉の中に。
茶トラの…小さな生き物。
小さく笑みを零せば、猫は小さく首を傾げて。
それからまた、音を立て始める。
「この時期になると、こういうやつがいるんだ。結構、暖かいのかもな」
「やっぱり寒いんだね。猫さん達も」
くすくす笑いながら、彼女は見続けて。
「でも、暖かいところを見つけたら、やっぱり寝ちゃうんだね……」
か細く、声を上げたあと。
瞼を閉じてしまった猫に、彼女は肩を落とす。
金網から、そこまでは少し遠くて。
触れることは、叶わないけれど。
「風、吹かないといいね」
「だな」
上半身を起こした彼女を追うように。
彼も立ち上がる。
手を取れば、あたりまえのように、きゅっと握られて。
「冬、乗り切れればいいね? あの子」
小さく零された言葉に。
彼はこくんと、頷いて見せた。
END
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