うなる声は そのままに
突きつけられた視線

それが意味することを
わかっているから

顔を上げられない
ままでいる




二人の温度差





ページをめくる音と。
シャーペンが走る音。
それが途切れれば。
「うー……」
なんていう、声が、耳に届く。
その数秒後には。
声とともに、視線も。
「………」
それを無視して、俺は自分の目の前のものに、集中しようとして。
なのに。
「………」
声は止まって。
残ったのは。
向けられている、その視線だけになって。
「…どうした?」
小さく息を吐いて、そう問えば。
ついでのように、顔も上げれば。
「わからない問題が…あるのです」
なんて、控えめな言葉。
ここで突き放しても、同じことが繰り返されることを、知っているから。
彼女の視線に、折れてしまった。
俺の、負け。
もう一つ、ため息。
「夕飯な」
「…あーい」
そんな会話のあと、俺は彼女の方へと、視線を移す。
自分でやれって、言ったのに。
彼女は結局、俺の家に来て。
宿題を広げてた。
理由を聞けば、必ずと言っていいほど。
「わかんないんだもん」
なんて。
開き直って。
少し、頬を膨らませて。
言うに決まってる。
まぁそれでも、本当にわからない部分だけを聞いてくるだけ、だから。
まだいいか、とは…思っているけれど。
「英語、理解出来ない…」
「しようと思ってないだけ。おまえは」
「…うー……」
「いいから、早くやれ。終わらないだろ?」
「明日も来るー」
言いながら、彼女はテーブルに突っ伏して。
それでも、顔だけを上げて、アイスココアの入ったグラスへ、手を伸ばして。
俺はそれに、眉根を寄せるだけ。
「バイトは?」
「ここから行く」
「………」
「だって英語、わかんないんだもん!」
まるで、子供。
思い当たって、息を吐いて。
彼女の手から、グラスを取り上げて。
「いいから、やれ」
「………」
「やれるところまでぐらいは」
「……了解」
言って、彼女は、質問を明確なものにしていく。
それに答えながら。
確かに――彼女がここに、来なければ。
俺も、自分の宿題を、後回しにしていたかもしれなくて。
だからこそ、感謝はしているけれど。
「あーもう、全部わかんないー!!」
こんな言葉で、俺の家にい続ける彼女には。
絶対に、それは言ってやらないと。
ため息を吐きながら。
俺は、思ってた。

END

 

夏休みの宿題を、やっております。
この二人。
題名は、二人の考えていることが、全然違うので。
それを『温度』ということにしてみた次第(笑)。

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