おまえが言ったから、確かにそうだなって、頷いた。
ふたりで
雑誌を捲る音がして、彼は視線をそちらへと移動させる。
それに気づいた小さな笑みが、彼に向いて。
「どうしたの?」
と、彼女は首を傾げさせた。
それに、ふっと笑って、指を滑らせる。
行く先を見続ける彼女の目の前で、彼は指を止めた。
この街にたった一つの映画館。
その、この時期のラインナップ。
「観に行こう。だめか?」
「ううん、いいよ。ちょうど来週からだから」
「ああ。来週な」
にっこりと微笑んだ彼女に、同じものを向けて。
彼はソファの背もたれに、身体を預けた。
けれど。
「珪くんって映画、好きだよね?」
くすくすと笑ったそれに、もう一度、身体を起こす。
雑誌の、そのページの端を三角に折って、彼女はページを捲った。
その音が、部屋の中にわずかに響く。
「そうか?」
「うん。あ、でも……」
「?」
「テレビ、まだ壊れたまま?」
「…ああ」
「だから、かな?」
一人で納得して。
彼女はそこに、視線を走らせていく。
それに、彼女の名を呼ぶことで、話を掘り返せば。
彼女は少し微笑って、言葉を綴る。
「ビデオが出るの、待ってられないのかなって、思ったけど。出ても、見られないんだもんね? 珪くんの家じゃ」
「……だな」
「だからかなって。映画が好きなわけじゃないのかなって、ちょっと思ったの」
「そういう、わけじゃない」
「…映画、好き?」
「ああ」
「そっか」
くすくす笑って、彼女は彼から、視線を外す。
それはまた、雑誌へと戻されて。
「大きな画面で見ると、迫力あるもんね?」
「ああ」
「でもね? わたしは、家で見るのも好きだよ?」
ページが捲られて。
彼女はそこに、視線を注ぐ。
彼は彼女の横顔を、見続けるだけで。
口を挟むことはしない。
「家で、ビデオを見るの」
「………」
「映画館で、知らない、大勢の人と観るんじゃなくて。家で、知ってる人と」
「…優菜?」
「その……珪くんと二人きりで、とか…」
言った、そのあとで。
彼女は雑誌で顔を覆う。
聞いた彼は、ほんのりと頬を染めて。
視線を逸らして、口元を手で覆っていた。
雑誌がほんの少し、下がって。
それに気づいて、彼は彼女を見る。
彼女の様子を、伺いながら。
それから、二人で。
照れ隠しのように、笑って。
「いつか…な」
「え? あ、う、うん」
返るとは思っていなかったのか。
答えを出せば、彼女の顔は、もっと赤くなる。
その頬に手を当てた彼女の姿に、微笑を浮かべて。
彼は彼女の膝から雑誌を奪い取った。
捲れば、彼女は横から視線を注いできて。
指を滑らせては、声を上げて。
そうやって、一ヶ月の予定が決まっていくことに。
「何か、やりたいこと、いっぱいだね?」
「だな」
二人で笑いながら、何気ない時間を過ごしていた。
二人で過ごすということが、とても楽しくて、嬉しいものであることは知っていたのだけれど。
彼女が言ったことを、現実にするために。
買い物にでも行こうかと、彼はポツリと、考えていた。
END
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