わたしの願いは、いつだって、ただ一つなの。

あなたが何を言おうと。
あなたに何を言われようと。
それは変えたく、ないから。



理由




進路希望調査のプリントを前に、わたしは必死に考えている。
進学…したいけど。
それは、わたしの夢には、必要なことなのかな?
そう、考えれば考えるほど、わからなくなってくる。
進学したい理由は、いろいろあるけど。
きっと、一番の理由は。
彼が進学すると、言っていたからかもしれない。
就職しようっていう気はないから。
高校を卒業したあとも、バイトでお願いします、なんて、店長には言っておいた。
だからあとは。
進学する、その理由を。
わたしの中で、確固たるものにするだけ。
……なんだけど。
一流にする理由が、見つからない。
彼と一緒がいいから、じゃ。
この想いが届かなかった時に、傷が深くなるだけ。
彼の表情も、曇るだけ。
「……どうしよう…」
呟いて、息を吐く。
告白を、しなければいいのかもしれないけど。
でも、今だってとても、口にしてしまいたいのに。
あと一年の間に、口にしてしまうかもしれないのに。
プラス四年なんて、耐えられるはずもない。
「………」
それに。
口にしてしまいたいって、思ってはいるけど。
もしものことを考えたら。
何も言えないというのも……事実だから。
あと五年。
もしかしたら――大丈夫かもしれない。
だから、彼と同じ進路でも、かまわないのかもしれなくて。
そんな風に、思考は同じところを回っているから。
あとは理由。
彼と同じだから。
彼は必ず、受かるだろうから。
彼がいるから。
以外の……理由。
「どうした?」
よく聞き知った声が届いて。
わたしは顔を上げる。
そこには、思った通りの顔があって。
「終わったの?」
そう聞くのが、わたしにはやっとだった。
「……ああ」
「そっか。氷室先生、なんて?」
「寝るなって」
無理だと思いますって、言ったんだけどな、前に。俺。
加えられた言葉に、くすくすと笑いながら、立ち上がる。
学校はもう、わずかな話し声だけを残して、ここにあって。
ほかのみんなはもう、脱出を果たしたり、好きなことに精を出したりしてる。
わたしたちも、帰らないと、いけない。
だからと、いすから腰を上げたわたしの代わりに。
彼はプリントを手に取って、眺めてた。
「進学…するのか?」
零された言葉に、鞄を手にしてから、わたしは彼の顔を見る。
彼もわたしを見てて。
大きく、胸が高鳴った。
「ど、どうしようかな…って」
「?」
「夢…あるんだけど。進学するのが、本当に正しいのかなって」
「………」
「進学するにしたって。成績のこととか考えると、一流がいいんじゃないかって、有沢さんとか、守村くんは言うんだけど。そこにしなくちゃいけない理由が……わたしの中には、ないから」
綴って。
言葉にして…吐き出す。
それに彼は、またプリントを見て。
何かを、考えていて。
「珪くんは、進学でしょう? 一流大学」
「…ああ」
プリントを、彼の手から取って。
鞄の中に、入れれば。
蓋をした直後に、わたしの右手は、彼の左手に収まった。
「帰ろう」
そんな言葉と共に。
「それから」
「なぁに?」
「おまえの夢が何なのか、俺…わからないけど」
「…うん」
「何となくで決めた理由でも、何でも。一流って考えてるなら。それでもいいと思う、俺」
「………」
「やりなおしは、きくんだし。周りの迷惑とか、考えるなら。自分で金溜めて、勉強しても、いいんだし」
「うん」
「だから。一緒の大学、行こう?」
言われた言葉に、目を見開いて。
少しだけ、頬を染めた彼に、笑みを零す。
彼も、一緒の時間を過ごしたいと、思ってくれているのかもしれない。
わたしと同じ想いを、今は抱えてくれているのかもしれない。
だから。
こくんと、頷いておいた。

END

 

で、家に帰って。
結局、理由を探すために、必死に考えて。
それから、試験で彼に勝ったことが一度もないということに気づいて。
彼に勝つために、大学に行く、という理由を考えてみたり(笑)。

誰でも手軽に出来る「10ノお題」』さまからお借りいたしました。
三つ目はゆめ。
どの『ゆめ』で行こうかと考えてました。

web拍手に置いてました。

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