彼女の言葉には、今まで。
何度も――驚かされてきた。



ひかり




夜空を見上げて、彼女は息を吐く。
その顔には薄らとした笑みが伺えて。
俺もまた、同じように微笑んでいた。
彼女が何を考えているのかは知らない。
わからないけれど、嫌なことを考えているのではないことだけはわかる。
でなければ、こんな顔はしない。
「今日、星が綺麗だね」
「ああ」
言葉に短く返答をすれば。
彼女は笑みを濃くして。
月を指差した。
「月も丸くって、綺麗だし」
なんて、言葉と共に俺を振り返って。
繋いでいた手に、力を込める。
それが嬉しくて、俺も同じように手を握った。
「そう言えば、月って自分で光ってないんだよね?」
問いに、少し考え込んで。
それでもすぐに、頷きを返す。
月は自分で光れない。
太陽の光を反射することでしか。
「そう考えると、太陽ってすごいよね?」
「?
どうして?」
「だって、太陽って、昼も夜も、自分の光を届けてるんだよ?
すごいよね」
言われて、目を見開いて。
また、考えて。
その通りだという答えに行き着くよりも先に、彼女が説明してくれた。
「昼は、自分でそのままの光を届けてるでしょう?」
「ああ」
「で、夜は月とか星とかに反射させて、間接的だけど…地上に光を届けてるの」
「………」
「わかった?」
「…ああ」
嬉しそうな顔で、彼女はまた歩き出す。
遅れないようにと、俺もすぐに歩き出して。
そして、今教えられたことを反芻していた。
月は自分では光れない。
だから、太陽に力を借りて、自分の姿を誇示している。
太陽の力を借りてしか――月は自分の姿を見てもらえない。
確かに、太陽はすごい。
「でも、月もすごいけどね」
「どうして?」
聞き返せば、彼女はいたずらっぽく笑って。
「月は、太陽の光を優しくしてるからね」
と、教えてくれた。
「夏なんか、太陽の光は強すぎるでしょう?
それを、夜、月は優しくしてくれるの。それに、暗い夜に、こうやって太陽の光を届けてくれるから、明るいでしょう? だけど、星だけだと弱すぎると思うんだ。新月の日なんて、人工の光がないと、ちょっと心細いし」
「…だな」
「でしょう?
だから、月もなくちゃダメなんだよ」
彼女の言葉に大きく頷いて。
俺は空を振り仰ぐ。
空の中心には月。
その周りには星があって。
散りばめられていて。
それらは自分で光っているわけではないけれど。
太陽の光を、反射させているだけだけれど。
なくてはならないもので。
「すごいな」
「でしょ?」
俺が言った言葉の本当の意味は、きっとわかってはいないと思うけれど。
それでもいいと、俺は思ったから。
「ああ。すごい」
笑顔で、そう届けてみた。

すごいのはきっと。
そんなことにまで気づける、彼女だと、俺は思う。

END

 

 

電車に乗りながら考えた話。
暑いなーとか思いながら。
それがどうしてこうなったかは、樹にもよくわからないんですけど。
でも、珪くんは太陽みたいなものだと、樹は思う……(何故)。

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