二人で見ているから
すべてが輝く

すべての一瞬一瞬が
本当に大事

それがわかって

思い知らされて

それでも 目の前のそこは
青ばかり



二人の場所




たったひとりで、ぼんやりと、眺めてた。
波止場に停まっている船の先。
太陽の光が反射して。
眩しくて。
手をかざして、目を細めれば。
「こんなところにいたのか」
後ろから、声をかけられた。
「珪くん」
振り返って、名前を呼んで。
彼が隣りに来るのを、ただただ待って。
タンッという、木の橋に、彼が降り立ったその音を聞く。
「捜した」
「ごめんね? 邪魔しちゃいそうだったから…」
そばまで来てくれた彼の顔を見上げて、わたしはそう、言葉を紡ぐ。
海のそばの、小さな公園で。
今日は彼の、モデルとしての、仕事があって。
そばにいても、何もできないわたしは。
それが何だか悲しくなって、その場を離れた。
目的もなく、ただただ歩いて。
辿り着いたのは、小さな波止場。
桟橋に足を付けたら、視界は大きな船と、青だけになってて。
何だかすごく、さわやかな気持ちになってた。
「今は? 休憩中?」
「ああ。昼…食べに行こうと思って」
「? もう、そんな時間?」
「気づかなかったのか?」
手首に収まっている腕時計に視線を落とせば。
確かにそれは、十二時を十分ぐらい、過ぎていた。
「スタッフが弁当、用意してたけど。どこかに食べに出るか?」
「…お弁当、わたしの分もあるの?」
「ああ。
mimiさんが用意したって、教えてくれた」
「そう……」
視線を伏せて、考える。
そうして、波の音にも上げなかった視線を。
突然鳴り響いた汽笛に、わたしはそれを上げた。
海を、大きな船が横切っていく。
「この辺で探すか?」
船を見ていたら、彼の声が、近くでして。
その近さに、驚いて。
わたしはぱっと、視線を逸らした。
手とか繋いだりしてるけど。
今日みたいにこうやって、彼の仕事についてくることだって、許してくれたりするのに。
不意にそばに立たれたりすると。
胸はすぐに、どきどきと活動を早めちゃう。
「優菜?」
「あ、え? なぁに?」
「昼…どうする?」
呆れずに、彼はもう一度、言葉を綴ってくれて。
むしろ、心配そうなそれに、わたしはまた、想いを募らせていく。
触れたいと願うのは、こういう時。
それをぐっと押し込めて。
わたしは「どうしようか?」と。
やっとのことで、それだけを紡いだ。
お昼よりも、何よりも。
頭の中は、あなたのことだけで。
だからどうしても、考えられなくなる。
「珪くんはどうしたい?」
彼の顔を見上げて、言葉を綴る。
その向こうに見える空は、真っ青で。
白い雲の姿は、わずかに見えるだけ。
耳には、波と汽笛。
「…珪くん……?」
彼の表情は変わらずに、わたしだけを、その瞳に映してくれて。
それでも、何も言ってはくれなくて。
わたしはただ、彼の名前を紡ぐことしか、できないでいたのだけれど。
ほんの少しだけ。
どうしても――触れたくて。
「…珪くん?」
手を伸ばして、彼の手の甲に触れた。
本当に、ちょっとだけ。
そこに、指先を添えるぐらいのこと。
触れることのできた彼の手は、いつもの暖かさで、そこにあって。
でもそうすればそうしただけ。
もっと触れたいと、願ってしまう。
けどそれは、仕方のないことだと、知っているから。
そんなことを考えていると、彼がわたしの手を取ってくれた。
何も言わずに歩き出した彼の手を、しっかりと握って。
それに付いていく。
海風が吹いて。
それに振り返ったわたしの瞳には。
青という色、一色だけで。
彼といられるのなら、どんな場所でもかまわない。
そんなことを、考えていた。

END

 

ど、どんな話よ?
と、本気で思ってしまいました。
でも書き直さないやつ…。

多分このあと。
二人は逃避したものと思われます(笑)。

二次創作書きさんにたった10のお題』より、お借りしました。
二つ目は『波止場の海と空』。
でした。

web拍手に置いてました。

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