大丈夫、大丈夫。
何度も何度も、自分に言い聞かせてる。

大丈夫、大丈夫。
きっとあなたは、気に入ってくれる。



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小さくため息を吐いて、彼女は顔を上げた。
大丈夫だと、思うのに。
大丈夫だと、わかっているのに。
不安で不安で、仕方がないのは。
この姿を、彼に見せていないため。
両足を投げ出した格好で、部屋の中心に腰を下ろしたまま。
彼女はまた、視線を落とした。
髪に飾ったのは、彼と一緒に買い物に行った時に見つけた、七宝のバレッタで。
それでさえ、彼がいいと言ったから、買ったようなもの。
彼女自身は、自分には大人っぽいとさえ、思ってしまったのに。
彼の、大丈夫だ、という言葉に、買うことを決めていたのだから。
頭を動かす度に、シャラシャラと後ろから音がする。
それが、最初は嬉しかったのに。
今は不安を煽る道具にしか、なっていなくて。
彼女は無言で、また、顔を上げた。
時計を見ても、さっき見た時から、五分ほどしか、経っていなくて。
小さく小さく、ため息を零す。
早く時間が来れば――とも思うけれど。
まだ、来なくてもいい、とも、思ってしまっていて。
彼は、何と言うだろう?
去年や一昨年のように、似合っていると言ってくれるだろうか?
それとも――。
考えて、大きく頭を左右に振った。
大丈夫、大丈夫。
自分に言い聞かせるように、ゆっくりと、胸に手を当てて。
彼女は静かに、瞼を閉じる。
彼はそんな人ではないと、わかっている。
わかっているけれど、彼の瞳に陰りが見えたりしたら。
――悪い方にばかり考えてしまうのは、仕方のないことで。
外からは、少し早目に行くのか、子供たちのはしゃぐ声が聞こえて。
彼女はまた、ゆっくりと瞼を押し上げた。


待ち合わせの時間よりも、早く行くのが、もうあたりまえのことになっていて。
彼はそこで、わずかに視線を巡らせた。
まだ、彼女の姿がないことに、息を吐く。
浴衣を新調することも、ちらりとは考えたけれど。
結局、間に合わなくて、去年までと同じものに、腕を通した。
たぶん、彼女のことだから。
彼女は浴衣を、新調しているんだろう。
考えて、彼は眉根を寄せて、瞼を伏せる。
毎年同じものを着てくる自分を、彼女はどう思うだろう?
やっぱり、悲しく思うのだろうか?
瞼を上げて、腕を組んで。
手持ちぶさたに、時計へと目を向けた。
彼がここに来てから、時間はまだ、五分も経っていなくて。
視線を巡らせても、彼女の姿は、まだなくて。
彼はまた、視線を伏せる。
たとえ――悲しく思っていたとしても。
彼女はそれを、言葉で伝えようとは思わない。
けれど、顔には出るから。
彼女の表情が暗くなったら。
きっと自分も、悲しくなってしまう。
そうなったら――…。
考えて、彼は緩く、頭を左右に振った。
大丈夫、だとは思う。
彼女はとても、優しいから。
だからこそ、表には出さないのだけれど。
どうすればいいのか、それだけがわからなくて。
彼は大きく、息を吐いた。

END

 

友達の姉ちゃん(そう呼んでるだけ)の、お誕生日リクでした。
リクは、夏と祭りで、珪主のラブラブ、だったんですが…。
ご、ごめっ! 二人、会ってないし!
でも、似たようなことで落ち込んでる辺りで……って、フォローになってないね。
ごめんね、姉ちゃん。

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