何となく 暇だったから
昔を思い出して 手を伸ばした
何となく 暇だったから
見つけた群生に
嬉しくなって
身体を屈めた
見つけられなくても
たとえ 見つけられなくても
俺はよかったんだけど
あとから来た彼女は
必死になって
探してた
Clover
群生している緑の中に、視線を走らせる。
時々上げた視界の中では。
彼女が必死になって、手を伸ばしていた。
時折、彼女が「あっ」なんて、小さく声を上げるのだけれど。
それはすぐに、形を潜める。
どうしたのかを問えば。
同じ答えばかりが返っていて。
「見つけたって、思ったんだけど……」
「けど?」
「二つが重なってるだけで、違ったの」
しゅんっと肩を落として。
それでも、手は止めないままで。
俺はついつい、笑みを零してしまっていた。
そんなことをしながら、ふと気づいて、腕時計に目を落とす。
まだ昼過ぎだけれど。
今日はただ、ここに待ち合わせをしただけだったから。
俺は彼女の名を口にするために、口を開いた。
「優菜」
呼べば彼女は、顔を上げてくれて。
「なぁに?」
と、眉尻を下げた表情で、返してくれた。
見つけたいのに、見つからないから。
そんな表情をしているのは、そのためで。
俺はわずかに、失笑する。
「珪くん?」
「ああ…。どうするのかと、思ったから」
「え?」
「遊園地、行くんだろ?」
問えば、彼女は何度か瞬きを繰り返して。
視線を下げてから、考えはじめた。
「遊園地は、その……」
「ん?」
「ナイトパレードが見たい、だけ…って、わけじゃないんだけど。それが一番の目的だから」
「…ああ」
「早く行きたいなっていうのは、あるんだけど。けど……まだ、見つけてないし」
言いよどみながらも、そう言って。
彼女はまた、俺へと焦点を合わせてくれた。
「何でないんだと思う?」
「………」
「結構、見つかるのに…いつもだったら」
言いながら、また、手を伸ばして。
彼女は探しはじめるのだけれど。
「聞いたこと、ないか?」
「? 何を?」
「四つ葉のクローバーって、結構固まってるって」
「?」
「それを知ってるやつが、全部取っていったか。もしくは、もともとない群生なのか」
「………」
彼女は黙って、手元に目線を落としていて。
俺も口を噤んで、そんな彼女を見てた。
そばの停留所には、人が集まり出していて。
もうすぐ、バスが来ることを告げていたのだけれど。
急かすことも、促すこともしないまま。
彼女の言葉と、行動を待つ。
全部取っていったなら。
彼女はきっと、一つぐらいはあるかもしれない、なんて、探し続けるだろう。
もともとないなら。
その確率は、とても低いけれど。
その可能性も、なくはないから。
「………」
彼女は黙って、まだ手元を見つめていて。
時々、その手を揺らして。
指先で、クローバーの先を、揺らしていた。
俺はただ、それを見ているだけで。
探したいのかもしれない、とも思う。
確かに、ナイトパレードが目的なら。
時間は、まだまだ、あるけれど。
探したい理由が、俺にはわからないままで。
「――場所、変えるか?」
届ければ、彼女は弾かれたように、顔を上げた。
「森林公園なら、あるかもしれない」
「………」
「どうした?」
「遊園地は? 行かないの?」
「来週もやるだろ?
パレード。だから、来週、行こう?」
「………」
彼女は黙ったまま、また手元に、視線を落として。
考えているのか、動かないままで。
――けれど。
「迷惑じゃ、ない?」
「?」
「来週も、わたしと一緒で」
「そんなこと、ない」
「本当?」
「ああ」
むしろ嬉しいと、そう届けたかったけれど。
理由を、万が一にでも聞かれたら。
曖昧にできる自信も、なかったから。
「じゃあ、来週、森林公園に行こう?」
「……え?」
立ち上がった彼女から紡がれるのは。
てっきり、森林公園に行こうという、それだと思っていたから。
俺はその場で、呆然としてしまう。
彼女の顔を眺めて。
砂を払って、停留所へと歩いていく、その背中を眺めて。
それがピタッと止まって、戻ってくるまで。
「珪くん?」
「……来週?」
「うん」
「今日じゃなくて?」
「…うん」
「………」
「今日は、遊園地。で、来週、森林公園」
「……どうして?」
「お弁当、作りたいし」
「………」
「ダメ? かな…?」
呟くように言った彼女に、緩く首を振って、手を取った。
彼女との予定が埋まっていくのは、嬉しかったし。
彼女が何かをしてくれるなら。
それを断る理由も、俺にはなかったから。
「来週…な」
届けて、大きく首を縦に振った彼女に、笑ってた。
END
![]()
20040829のペーパーに載せておりました。
題名はもう、本当に、苦し紛れ(苦笑)。
考えている時間もなくて、ひねることも忘れ、そのままになっちゃったのです。