何が違うのかと聞かれれば
少し 難しい変わらないから
なのかもしれない
そうも思う
blooming-fool begonia
「あ!」
そう声を上げて、彼女は駆け出して。
手を伸ばして、それに触れる。
手袋をしたままだったことに、渋面を作って。
雫を取るために、軽く、手を振って。
それから、手袋を外して。
また――触れる。
「冷たいだろ?」
追いついて、声をかければ。
彼女は俺の顔を見上げて。
「冷たいけど、いいの」
そう、頬を膨らませて放ってた。
「火照った肌には、ちょうどいいのです」
加えて。
手袋をして。
その手で、雪をつかんで。
「うりゃ!」
頬に当たったのは、冷たいもの。
それに固まれば、彼女が走っていく背中が見えて。
頬に触れれば、濡れていて。
「………」
追いかけて、捕まえて。
「女の子は大切にー!」
「煩い」
道端の。
汚れていない雪をつかんで、彼女の額へ、押し付ける。
「……つーめーたーいー!」
溶けるまで、押し付けて。
それから放せば、彼女は急いで、俺から離れて。
コートの裾で、顔を拭ってた。
「…酷いし」
「仕返し」
「…君ってさ、いつもそうだよね? 僕がしたこと以上のことしてくるでしょう?」
「当然だろ? 二倍返し」
「当然じゃない」
「おまえはしてる」
言い返せば、彼女は黙って。
また、頬を膨らませて。
でも。
「そういえば、もうすぐだね」
そばの家の庭に飾られていたものに、彼女はそう零す。
彼女はイベント好きだから。
だからこそ、彼女の表情は、もう、笑みで。
「着てくの、考えないと」
「…ドレス、着ないくせに?」
「くせに」
「………」
「でも、同じでもいいかなぁ? この時期、外に出てると、怖いし」
「…何が?」
「花椿せんせい」
「……ああ」
「ブティックに引きずり込まれたら、出るの大変」
思いだしたのか、彼女は小さく頬を膨らませて。
それでもゆっくりと、歩き出す。
隣りにつけば、彼女は嬉しそうな表情を、浮かべていて。
「クリスマスといえば、ケーキとプレゼント。サンタさんに、トナカイさん」
「ツリー?」
「うん。それから、クリスマスソング」
言って。
今度は、その歌の題名を挙げていく。
ちょっとだけ、歌いながら。
「き〜よーし、こ〜のよーるー。真っ赤なお・は・な・のー、と・な・か・いさーんーはー」
くすくすと笑っても。
彼女の歌は、止まらずに続く。
「ジングルベール、ジングルベール、すーずーが〜鳴るー」
そんな風に。
「うぃうぃっしゅあめりくりすます」
「…言えてない」
「煩い」
「………」
「英語、苦手だもーん」
発して。
そしてまだ、歌を歌い続けて。
仕舞いには。
「まだ何かあったかなぁ?」
という始末。
それにくすくすと笑うのは、俺の役目。
考えてみれば、彼女のことは、笑ってばかりいる。
彼女の言動とか。
これからも、と、願うけれど。
「来年はないんだもんねー」
この言葉で、突き落とされる。
「今年で最後かー。なおさら楽しまないと!」
ぐっと拳を握って。
彼女は言って。
「ケーキ、いっぱい食べるぞー!」
「…そこか」
「プレゼント、いっぱいもらっちゃうぞー」
「一人一つ」
「…突っ込まなくていいです」
「………」
「でも、そのためには、僕もいっぱい、用意しないといけないんだけどね」
上方へと手を伸ばして。
伸びをして。
そして今度は。
「ゆーきやこんこん」
なんて、べつの歌を歌いはじめた彼女に。
やっぱり俺は、笑ってた。
END
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