その人にとって 今日という日は
やっぱり特別なんだと思う

だって
その人が生まれてきた
祝福すべき日でしょう?

この世界に形を持ってうまれてきたものに

無駄なものは一つとしてない

わたしはそう――信じているから




birthday vol.3





階段を上り終えて、わたしはふぅと息を吐く。
おかしい。
去年は楽々上っていたのに、何で今はこんなに疲れるんだ?
軽く眉根を寄せて。
それでもゆっくりと歩き出す。
周りの目が、ちょっと気になったけど。
それは仕方のないこと。
だって、わたし先輩だもん。
この階の子達にしたら、さ。
「あれ? 田端チャン?」
背後から声。
それに振り向けば、わたしよりもさらに一つ上の先輩がいらっしゃいました。
生徒会副会長の、君島先輩。
「何してんの?」
「日比谷くん、捜しに。君島くんは?」
なぜか仲良くて。
わたしは先輩のことを君付けで呼んでた。
敬語もなし。
それでも、君島くんは何も言わない。
「あー、日比谷かぁ。俺も日比谷で遊ぼうかなー」
遊ぶって……。
視線を上向けて、ちょっとどっか行っちゃったような表情で、君島くんは語る。
心なしか、ものすごく嬉しそうに。
「でも何で?」
「本人に聞きたいことがあるっていうか…」
探りたいこと?
まぁ、そんな感じで。
「ふぅーん」
「君島くんは?」
「俺? 俺は暇だから、遊んでくれる人募集中」
「……そう」
今は昼休み。
さっき放送で、生徒会役員、めちゃめちゃ収集かかってたのに。
「会議、じゃなかったの?」
「あ?」
「さっき放送……」
「ああ、いいのいいの。俺がいなくても出来るからさ。
それに、文化祭のことについてのことだから」
「今から?」
「そ。後期の選挙する前に、あらかた決めておいた方が、後期のやつらも楽じゃん?
だからさ。委員、クラスから選出してもらおう、とか。
何をやっちゃダメ、とか、いいとか……」
「それには加わらないんだ?」
「俺の仕事は、その中の穴を見つけて、発言するだけだから。
期待してていーよ、文化祭。
氷室センセ、ねじ伏せて、面白いこと考えてやるからさ」
ふっふっふ。
なんて笑って、君島くんは歩き出す。
わたしも歩く。
横に付いて。
今の言葉で、君島くんは後期も何かと顔を出すみたいだなって、わかった。
君島くんって、女の子みたいに美人さんだけど。
性格はものすごく容赦がない。
そういうギャップが、すごく好き。
副会長になれた理由は、いまだによくわからないけど。
俺を推薦してくれたのは、今の会長サマ。
って言ってたから、それなのかな?
「葉月は? 一緒じゃないの?」
顔を見てたら、急に問われて。
わたしはコクン、と頷いた。
「彼と行動を共にする時は、考えてることが一緒の時だけだよ?」
「ふーん」
「何で?」
「いつも一緒、みたいなイメージがあるからさ」
「………」
「お、日比谷発見!」
言ったと思ったら、駆け出して。
君島くんはその日比谷くんにタックルかましてた。
遊べー、って叫びながら。
俺今、超暇ー、とか言いながら。
逃げ腰の日比谷くん捕まえて。
君島くんの――情の現し方、っていうのかな?
それってばちょっと。
気に入られてる男の子にとっては、痛いものがあるみたいだけどね。
肉体的に。
そして時々、精神的に。
「昔の嫌な過去、脚色されて暴露されるからなー」
呟きながら、視線を窓の外へと移す。
と、君島くんが呼んでくれて。
日比谷くんでさえ、助けを求めてくれたから。
わたしは急いで、二人の元へと駆け寄った。



で、今は彼と一緒に行動中。
日比谷くんに何か悩みなーい? と、聞いたところ。
開発がものすごく早く進んでしまっているこのはばたき市に。
どうやら付いていけていないようで。
「部活もあるもんね?」
って聞き返したら。
「そうなんスよ。だからなかなか、研究できないんスよね。
それにジブンには、葉月先輩も研究しないといけませんから!」
との答えで。
だったらねぇ?
「ガイドブックとか、その辺りでいいのではないかと思ったわけです」
放課後の本屋さん。
人がまばらなそこに、わたしたちは足を踏み込んでた。
彼も行きたいと言ったから、一緒に来たわけで。
今まさに、理由を述べたところ。
「おまえ、よく知ってるけどな」
「ボーッとネット見てるからね。あと、なっちんとニィやんが情報源。
尽も教えてくれるしね」
「なるほどな」
一冊一冊、手に取って、ぱらぱらと捲っていく。
でも、これってものがない。
「おすすめとかわかる?」
「知らない」
「だよねー。君別に、知らなくてもかまわないって感じだし」
「かまわなくはないけど……」
「けど?」
「おまえがいるし」
「………」
そりゃ、新しいとこが出来たら連れ回して遊んでますけど?
それで覚えてるってこと?
「彼女が出来て、その子と行った時。
僕の名前を出さないよう、せいぜい気を付けてください」
「そうする」
笑ってる彼に、息を吐く。
まったく。
とか思いながらも。
別にいいかって、思ってる。
友達って、そういうものだし。
それに、甘えているのはわたしの方。
彼の優しさに頼っているのは、わたしの方だから。
本を元の場所へと戻す。
とにかく今は。
日比谷くんへのプレゼント探し。
「これは?」
言われて、視線を移す。
最新版!
とか、銘打たれてて。
彼が開いてたのを横から見たら。
これからの予定とかそういうのも、特集みたいに組んであった。
「あ、いいかも」
「だな」
「それに、葉月くんが選んだんだもんね?
日比谷くんにしてみたら、二重の喜びかも」
同じ物を手にして、買ってくることを伝えて。
わたしは歩き出す。
と、外に出ていく彼の姿が見えた。

「買わなかったの?」
本屋を出て、第一声。
彼に問いかけを投げた。
彼は頷いただけ。
「付き合ってくれただけってこと?」
「ああ」
「いいの? それで」
「暇だったし」
「………」
「どうした?」
「付き合わせた?」
「俺が勝手に付き合った」
「………」
そう言って、彼は視線を向かう方向へと投げた。
暖かくて、優しくて。
そばにいると、ほっとする。
「ありがとう」
届ければ、頭の上に手が乗って。
「たいしたことじゃない」
って返ってくる。
知っていたから。
息を吐いた。
短く短く、安堵の息を。
「来月、君の誕生日だね?」
「…だったか?」
「そうなんです! 何か欲しいものは?」
「………」
「何?」
言葉はなくて。
表情はちょっと、不機嫌そうで。
だからわたしは、横目で見上げたまま、そう聞いたんだけど。
「おまえ」
「ん?」
「俺にはそうやって、面と向かって聞くんだな?」
「イヤ?」
「そういうわけじゃない」
「だって君、遠慮なく文句言いそうだもん。
文句言わないって言うんなら、玲ちゃんが考えて、用意してあげてもいいけど」
「…その時に考える」
「………」
逃げられた。
思ったけど、それ以上は追求しなかった。
夕焼けに染まった空が、すごく綺麗だった。



昼休み。
彼と一緒にお弁当食べたくて、屋上へと、また階段を上ってた。
でもま、今日は平気。
タンタンッと軽快に上がる。
昨日はほら。
日比谷くん捜して、一階から四階まで駆け上がったのがいけなかったんだよ。
一人で頷いて、上っていく。
「田端チャン」
また後ろから声。
振り返って、その人の名を綴る。
「君島くん!」
「一人? 葉月は?」
「多分屋上。だから僕も、今向かっているのです」
「なるほど」
君島くんは? って聞いたら。
これからまた、昨日のごとく、日比谷くんのところに行くんだって。
それほど暇らしい。
「聞いていい?」
「何?」
「田端チャンにとって、葉月って何?」
「……?」
「いつも一緒じゃん? アイツと。モデルで、かなり無愛想で。
でも、からかうと面白いんだよな、アイツ」
「知ってるんだ」
「有名だし。――で?」
言われて、考える。
「面倒見てくれて、時々いじわるで」
「で?」
「で……、そばにいると、あったかい」
「――一緒にいるわけだねー」
くすくす笑って、君島くんはそう言って。
四階で離れていった。
彼と君島くんって、話したこと、あるのかな?
君島くんはそんな感じだったけど。
なんて思いつつ、階段を上がる。
二つのお弁当。
本当に毎回、芸がないけど。
今日は結構、気合入れてきたんだから!
ぐっと拳を握って、ドアノブを回す。
開いて、ドアの影を覗いて、彼がそこで寝ているのを確認した。
さらさらと風に揺れる金色の髪。
そのそばにちょこんって座って。
じーっと、顔を覗き込んで。
「お昼、お届けに参りましたー」
「……どうも」
起きてくれた彼に、くすくす笑う。
欠伸を漏らす彼の膝の上にそれを乗せて。
わたしはさっさと紐を解いた。
「そう言えばさ、君島先輩って知ってる?」
「君島……嵐士?」
あ、知ってましたか。
答えに頷くと。
彼は思いっきり、眉根を寄せた。
何?
「俺、あの人、好きじゃない」
「…からかうと面白いって言ってたけど」
「………」
無言のまま、彼は視線を逸らす。
つまり、そういうこと。
彼も君島くんのお気に入りの一人ってことなのかもしれない。
「君島くん、嫌い?」
「『君島くん』…?」
「仲いいの」
「………」
「いい人じゃん」
「それは…知ってる」
「けど、好きじゃない?」
「……ああ」
笑って、蓋開けて。
いただきますって零して。
「日比谷は?」
「今頃、君島くんに遊ばれてるかも」
「………」
「プレゼントは喜んでくれたよ?
僕と葉月くん、二人で選んだんだよーって言ったら、なおのこと」
「おまえ…」
「嘘は言ってないじゃん!」
そんな会話しながら、お弁当食べて。
やっぱり暖かいって、再確認してた。
空は真っ青で。
来月は彼の誕生月で。
考えることいっぱいだなーなんて、思ってみてた。

END

 

ゲストに『ひつじの涙』より、君島くん。
先輩出てこないので、誰でもいいから作りたい!
……って思ってしまったのがいけなかったんですね。
君島くんが、頭から離れてくれませんでした。
名前も(………)。
もっと面白い人なのにー!

日比谷くん、一回も書いてないので、わかるかとは思いますが。
樹、あんまりどころか、かなり、好きではありません。
好きな方、ごめんなさい。
多分もう、出てこない……(汗)。

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