その人にとって 今日という日は
やっぱり特別なんだと思う

だって
その人が生まれてきた
祝福すべき日でしょう?

この世界に形を持ってうまれてきたものに

無駄なものは一つとしてない

わたしはそう――信じているから




birthday vol.12





目の前にいる人物に、息を吐く。
大きく、盛大に。
そうすれば、その友達は、合わせていた両手を離して。
「そないに、露骨に嫌そうにせんでも、ええやん?」
って、困ったような表情をして、綴った。
それは……わかる。
わかってた。
わたしがそんな行動を取れば、ニィやんがこう言うことは。
「もう、手は貸さない」
「玲ちゃーん」
「ニィやんって、いっつもそうなんだもん。人に頼ってばっかりなとこ、あるよね? 特に僕」
「……かもしれん」
「頼られるイメージあるから、仕方ないのかもしれないけど。
ここぞって時には、自分から行動しないとダメ」
「…はい」
「ってことで、今がその時だと思うので、ダメです」
届ければ、ニィやんは大きく項垂れて。
それから。
「そうなんやろうけど…」
って、呻いてた。
「遅くなってもいいって言うなら、手、貸したげてもいいよ?」
「……遅くなっても…て?」
「友達じゃなくなるのが」
「………」
笑顔で届ければ、ニィやんは大きく目を見開いたままで、固まって。
だってそうじゃん。
合ってるよね?
ニィやん、人を引っ張っていけるような人なのに。
こういう時は、なぜか尻込みしちゃう。
で、他人の力を借りる。
自分だけで頑張らなければ、評価は薄いし。
不安まで与える。
ってことはだよ?
わたしが手を貸せば貸しただけ。
なっちんは疑問を抱くと思う。
だって、わたしが、二人の気持ちを知ってるってこと。
なっちんは知らないし。
ニィやんだって、自分のだけしか知らないんだって、思ってる。
甘いよ? お二人さん。
なんて、小さく口角を上げてた。
「どうします?」
「…どうします……て」
「自分で考えて、自分で誘って、自分で祝ってあげるか」
「………」
「もしくは、僕の力を借りて、僕が誘って、祝うか」
「……あの…」
「なっちんは確実に、僕にはありがとうって言ってくれるよね?
ニィやんには多分、憎まれ口しか叩かない」
「……せやから」
「縮まることはないね、確実に」
「………」
「僕となっちんの距離は、縮まるかも、だけど」
「それはちと…困るなぁ」
「だったら、自分だけでやりなさい!」
受け取っていたチケットを、無理矢理、ニィやんの手に、握らせる。
それから、背を向ければ。
後ろからは、呼び止める声。
振り返って、「ん?」なんて聞けば。
ニィやんはやっぱり、押し黙ってた。
「考えがまとまってから、呼ぼうね?」
「…はい」
肩にぽんっと手を置いて。
そうしてから、改めて、踵を返す。
わたしは、どうしようかな?
考えながら、廊下を歩いていくと。
人がいなくなった教室の中。
窓の方を見て、机に座っている人物が見えた。
そこ、わたしの席……。
思いながら、息を吐く。
だからこそ、彼が待っているのは、わたしなんだろうけど。
わたしの中で、彼の立場は、大きく変わっているから。
今まで、彼に見せていたわたしと。
同じような行動をしているのか、不安になる。
のに。
彼はどうして、わたしを待ってるんだろう?
思いながら、中途半端に開いていた扉を、開けた。
「あのさー、そこ、僕の席なんですけど?」
用意していた言葉。
それを届ければ、彼は、「悪い」と、言葉を零す。
けど、立とうとはしない。
それに諦めたように、項垂れて見せて。
わたしは教室へと、入っていく。
「どしたの?」
「?」
「何かあったんじゃないの?」
「…べつに」
「?」
「おまえは?」
「何が?」
「もうすぐなんじゃないのか? 藤井の……」
「………」
覚えてたんだ?
そう言おうと思って、やめた。
嫌な子に…なりそうな気がしたから。
「そうなんだけど、実はまだ、考え中」
代わりに、苦笑でそう届けた。
彼は小さく笑って、そうかと言うだけ。
「何がいいかな?」
「候補は?」
「候補…? うーん……」
「ないのか? それも」
「ない」
「………」
「思いつくものは、どれも微妙なんだよね。アクセサリーは、去年あげちゃったし」
「趣味は? あいつの」
「カメラ」
「……高いな」
「だよねー? 好きなものはいろいろあるんだけど、どれをあげても、微妙そうで…」
思いながら、息を吐く。
なっちん、欲しいもの、何かなかったっけ?
考えて、考えて。
「そういえば…」
なんて、ポツリと零した彼に、わたしは顔を上げる。
「何ー?」
「さっきまで、ここにいて……」
「なっちん?」
「ああ。十分…ぐらい、前まで、だけど」
「うん」
「で…その時に、雑誌、見てて」
「今日買ってきたやつかな? 学校来る前に。君が、表紙とグラビア飾ってるやつ」
「……ああ」
「で? それが?」
「その時に…、俺と一緒に写ってるモデルの、ぼうし。ほしいって、ぶつぶつ言ってた」
「………」
ぼ、帽子?
どんなの?
思い出そうって、ぐるぐる考える。
けど、ちらりと見ただけだったから、よく思い出せない。
だって、彼の方が気になったんだもん。
瞼をきつく下げて。
周りからの情報を遮断してるのに。
「…もらってきてやろうか?」
「はい?」
降ったのは、そんな声。
「って言うか、買えるか交渉…した方がいいのか?」
「出来れば!」
ぐっと、彼の腕を掴んで、わたしは言う。
あ、近い。
なんて思った瞬間。
ふっと笑った彼に、固まってた。
「じゃあ、今度のバイトの時にでも、一緒にお願いしろ」
「…うわ、命令」
「当たり前」
額を叩かれて、わたしがそこを抑えれば。
彼は立ち上がって、荷物を手にする。
自分のと、わたしのと。
「帰ろう」
「おー」
「で? 今まで、どこ行ってたんだ? おまえ」
「ニィやんに、お願いされてた」
「…そうか」
「うん」
なっちんの誕生日プレゼントは、まぁ、大丈夫だろうとは思う。
でも、それでも。
本屋さんに行って、チェックしとくぐらいはしよう。
なんて。
彼の隣りを歩きながら、思ってた。

END

 

遅れに遅れてしまった、なっちんの誕生日です。
ごめんねー、嫌いなわけじゃないの!
むしろ、好きなの!
でも、ネタが出てこなくて、悩んでましたが。

この時になると、二人とも、相手のこと、好きだから。
でもまだ、知らないから、珪くんの想い。玲は。
難しいこと、この上ない……。

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