君だって
同じクラスでしょう?仕事はいっぱいあるんだから
そんなとこでサボってないでよね!
青い空の下で
あれ?
ピタッと手を止めて。
周りを見る。
と、そこにいたのは、隣りのクラスの友達で。
来てくれたのかな?
なんて思いながら、手を挙げた。
向こうも気づいてくれたみたいで、少し小走りになって、目の前まで来てくれる。
……んだけど。
表情はなぜか、怒った風。
「玲!」
「どうしたの? 和馬」
「葉月知らねぇ?」
「葉月くん? 知らないけど?」
「ここには?」
「来てない」
「………」
「どしたん? まさかサボってるの? 彼は」
「………」
聞けば、返されたのは無言の頷きで。
わたしははぁーと、長く息を吐く。
そんな気はしたんだ。そんな気は。
だから、サボらないようにね、って。
朝、そう、言葉を届けたのに。
「アイツの当番なんだけどさ。全然来なくて」
「もう少しで僕の当番終わるから。一緒に捜す」
「悪ぃ。いそうな場所は捜したんだけどよ」
「屋上は?」
「いなかった」
「あそこは? 給水塔の上」
「上ってみたけどよ。なし」
「体育館裏」
「人が多いから、いないと思った。とりあえず、見には行ったけどよ」
「使ってない教室は?」
「捜した。校内は全部」
「………」
「どこにいんだろうな? あいつ」
いやね。
もう一つ、彼がいそうな場所はある。
あるんだけど、出来ればあそこに、和馬は連れて行きたくない。
いや、もう。何となく。
いてもたってもいられなくて。
和馬がまだ、教室から姿を消さないうちに。
わたしはそばにいた友達に、あとを頼んでも平気かどうかを聞いて。
「大丈夫やで? 行ってきー」
「ありがと。ニィやん!」
返ってきた答えに、そう言葉を返して。
みんなで揃えたエプロンを取って。
ニィやんに押し付けてから、教室を出た。
もう一回校内を見てくると言った和馬に頷いて。
わたしは外へと、足を向ける。
他校の生徒らしい、女の子達を横目に見ながら。
昇降口を出て。
念のため、体育館裏を通って。
猫の一家の姿がないことを確認してから、森を抜けた。
ここにいないとなると。
猫さん達は多分、ここにいるはず。
そう、思っていたら。
「…やっぱりね」
抜けた直後に見えた色に、大きく息を吐いた。
それに気づいたのか、彼もわたしを見てくれて。
「田端?」
なんて、呼んでくれたけど。
「今、何時ですか?」
「?」
「和馬が捜してた。クラスの当番、次、君なんだって?」
「………」
歩を、彼の方へと進めながら、わたしは言葉を紡いでいく。
一匹の猫が、わたしの方へとやってきてくれたから。
その子を抱き上げて。
それでも、彼からは返答がない。
「………」
黙った、まま。
「わかるけど。君きっと、客寄せなんでしょ?」
「………」
「どんなことやるわけ?」
「…チラシ配り」
「とりあえず、それもらってきなよ。で、校門とこでばらまいて。ここに戻ってくれば?」
「…配るんじゃないのか?」
「どうせ、いつかは捨てられるんだから、いいんじゃない?
君がばらまけば、絶対に女子の方々は拾ってくれるだろうから。そしたら、ここに戻ってきなよ。この子達は僕が見てるからさ」
彼の隣りに腰掛けて。
間に入ってきた猫さんの頭を撫でる。
まだ身体は小さいけど、しっかりと育ってるみたい。
いなくなってる子もいないし。
そんなことを考えていたら。
彼はゆっくりと、腰を上げた。
引き止める声もあったけれど。
「すぐに戻る」
そう言って、彼は駆け出す。
追いかけた子もいたけど。
わたしの膝の上に乗っていた母猫に呼び止められて。
渋々と言った感じで、戻ってきた。
ミーと一声上げて。
わたしのそばへと、やってくる。
「大丈夫だよ。すぐに戻ってくるから」
頭を撫でて。
その小ささに、笑みを零した。
一度伸びをして。
空を見上げて。
それでもすぐに、上がった声に、視線を地上へと戻す。
天気いいし。
彼はもうすぐ、戻ってくるだろうから。
「みんなで寝て、待ってようか?」
くすくす笑いながら発した言葉に。
返されたのは、母猫の疑問符の付いた、声だった。
END
|